QRコードといえば、読み取るとURLが出てきて、タップするとブラウザが開いてそのページへアクセスできたり、LINEなどの友だち登録、QRコード決済などができるもの――と思っていませんか? QRコードは特定のURLにアクセスしたりするだけが能じゃありません。本稿では、QRコードの新しい活用方法の例を紹介します。
電車のホームドア自動開閉制御については過去のコラム(「変わり種QRコード・バーコード前編」)でも採りあげていますが、今回はもう少し詳細に解説しましょう。
電車のホームドアは、視覚障がい者や酔客などの線路転落・電車への接触を防ぎ、またそれに伴う運航遅延を減少させるため、ホームの縁端に設置される開閉式の仕切り柵です。ホームドアの歴史は意外に古く、世界最古は1961年、ロシアの現・サンクトペテルブルク地下鉄2号線パルク・パビエデ駅とされています。日本では1974年の東海道新幹線熱海駅が初めてでした。
線路に落ちないためだけだったら一枚の長~い柵があればいいのですが、当然ながら列車に乗降する必要がありますので、列車のドアと揃った位置に、ホームドアにも開閉式ドアが必要になります。
しかしこのホームドア、安全装置として有用なのですが、コストが高くなかなか設置が進みません。一般的に一駅あたり数億~数十億円かかるといわれます。ホームドアを運んできて設置するだけでなく、ホームドアの重さや負荷に耐えられるようホーム自体の補強工事も必要なんだとか。国交省によると、設置済み駅は2021年3月末時点で全国9411駅のうち943駅。10万人以上が利用する154駅だけに限っても、設置済みホームは全851か所のうち334か所とのこと。
このホームドアの自動開閉制御を低コストで実現するためにQRコードが活躍しています。
動作原理は、編成やドアの数といった車両情報を格納したQRコードステッカーを車両に貼り、それをホーム天井から吊り下げられたカメラで読み取る、というもの。QRコードを両扉にそれぞれ貼ることで、電車ドア開閉も検知できます(両扉のQRコードが左右逆方向に水平移動すればドア開閉中、左右同方向に水平移動していれば電車走行中)。電車ドア開閉中が判れば、ホームドア開閉を連動させることも可能、となるわけですね。
このシステムのおかげもあってか、2024年2月20日で東京都営地下鉄全106駅のホームドア整備は完了する予定だそうです。
※本稿執筆2024/2/14時点
なお、このシステム実現のためにtQR(R)という新型QRコードが株式会社デンソーウェーブと東京都交通局によって共同開発されました。
また同様の仕組みは京急電鉄、小田急電鉄、JR東海でも導入が進んでいます。
QRコードを、イベント会場や施設への入退場 / 入退館管理に使うケースも増えています。
これにはいろいろなやり方があります。
(1)
入場希望者に、事前にユニークなQRコードを発行しておき、当日、そのQRコードを持参してもらう。受付でスマートフォンで表示してもらい、それを読み取ることで本人照合がなされ、入場可になる。
例)ライブ会場など[入場者がスマートフォンに表示したQRコードを受付に見せる]
ライブコンサートなど、大勢の入場希望者をいちどきに捌きたい場合は、スマートフォンでのQRコード表示 → 読み取り → 入場 が必須になるでしょうが、例えば取引先工場への入館希望など、特定少数の来訪が想定される場合は、必ずしもスマートフォン表示でなく、紙に印刷して持参してもらうのでもよいでしょう。
例)オフィスなど[訪問者がスマートフォンに表示したQRコードを入口で読み取らせる]
機密情報があるオフィスなどでは、来客が任意の再入館ができてしまわないよう、入館ゲート通過可回数を予め制限しておく必要があります。その回数を使い切ったら、QRコードは使い捨てになります。来客が使い終わったら回収して再有効化しなければならないICカード入館証よりは、かなり運用コストが低いと思われます。もし仮にQRコードを印刷して渡す場合は、使い終わった入館証を捨ててもらうためのゴミ箱の用意は必要になるでしょう。
(2)
施設利用者のスマートフォンで、入店時と退店時にそれぞれQRコードを読み取ってもらう。これにより、チェックインとチェックアウトの時刻が記録され、利用時間にしたがった利用料精算が可能になる。
例)シェアスペース、コワーキングカフェなど[施設に掲示したQRコードを利用者がスマートフォンで読み取る]
こうしたQRコード読み取りによるチェックイン / チェックアウト記録を行うパッケージには、「QRGO」などがあります。
例)塾など[利用者がスマートフォンに表示したQRコードを / 紙に印刷したQRコードを入口で読み取らせる]
例えば学習塾などでは、利用者当人(子ども)よりも保護者のほうに『ちゃんと通わせたい、しっかり真面目に授業を受けさせたい』というニーズが生まれるものです。こうしたサービスでは、保護者に“お宅のお子さんはちゃんとウチの塾に来てますよ”“今晩、お子さんはこちらを〇〇時に出ましたよ”ということを塾から発信することが安心材料になります。例えば「QR入退管理 For School」というパッケージでは、生徒がQRコード入館証をかざして入退館記録が行われたら、すぐに保護者に自動メールが飛ぶようになっています。
このように、
・入場者がQRコードを見せる
・受付がQRコードを読み取ってくれる
・入場者がQRコードをかざして読み取らせる必要あり
・入場者がQRコードを読み取る
というふうにパターン分けされます。
ダイドードリンコ株式会社の「DrinkPay」は、似たものがちょっと見当たらない、なかなか独特なサービスです。
基本的な使い方は、
・オフィス内に「DrinkPay」自販機を設置する。
・QRコードを社内で発行し、配布する。
・従業員はそのQRコードを自分のスマートフォンで表示させ、自販機に読み取らせる。
・無料で自販機から飲料が出てくる。
というものです。
これはつまり、社内ウォーターサーバーの清涼飲料水版といえるでしょう。無料福利厚生ですので、従業員満足度も向上するはずです。
※無制限OKとするか、1日1本までに制限するかは経営者次第、ですね。
カーディーラーなど、ショールームを持っている事業者が来客向けウェルカムドリンクの自販機として使うことももちろんできます。
(PR TIMES > 自動販売機を通じた満足度・業務効率化向上に繋がる新たな決済サービス QRコード※1を活用した新サービス「Drink Pay」展開 より)
なおダイドードリンコでは「DrinkPay」を、女性ヘルスケア応援自販機として生理用品の搬出に使うことも提案しているそうです。社会的意義の高い活用法といえそうですね。
後編記事では今回ご紹介し切れなかったさらなる活用方法をご紹介します。お楽しみに。
※本コラムに掲載した商品名、サービス名、会社名またはロゴマークは、各社の商標、登録商標もしくは商号です。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
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