医薬品とバーコードの関係

2025.01.22

医薬品には様々な目的で様々なコードがついている

 

医薬品には実に多くのコードが付与されています。これらは医薬品の情報を取り扱う上で大切なものですが、医薬品や医療関係者ならまだしも、そうでない方にはなかなか難解なことも事実。医療用医薬品の薬価ごとに設定されている薬価基準収載医薬品コードやYJコード、病院やクリニックがレセプトを提出する際に使用するレセプト電算処理システム用コード、そしてお馴染みのJANコード、医薬品の取り違え防止やトレーサビリティ確保を推進するために導入されたGS1データバーやGS1-128、その他にも医薬品は様々な分野で体系の異なる医薬品コードが用いられています。

 

本稿では、その中でも市販の医薬品と医療用医薬品に利用されているバーコードについて解説をしていきます。

 

 

市販の医薬品

 

薬局やドラッグストアなどで処方箋なしに買える市販の医薬品は、医薬品業界ではOTC(Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター)と言われています。カウンター越しに薬が販売されることからこの名前が付いたようです。これらの市販の医薬品は他の商品同様に商品にはJANコード、それを入れた段ボールにはITFが印刷されています。

 

 

 

 

医療用医薬品

 

こうした市販の医薬品とは違い、病院やクリニックなどで医師が発行した処方箋により 薬局で調剤して提供する薬は「医療用医薬品」といいます。 この医療用医薬品は市販の医薬品と違い、誤薬処方による事故の発生予防や、中には有効期限やロット数などの管理が要求される薬もあるなど、市販の医薬品よりもより厳密な管理が要求されています。

 

日本では2006年に厚生労働省が、医薬品の取り違え事故防止や有効期限の管理、トレーサビリティの確保などを目的として医療用医薬品ではJANコード、ITFに代わって以下の4種類のGS1データバー及びGS1-128というバーコードを使用することが通知され、2022年12月1日よりそれらの表示が義務化されました。

・GS1データバー限定型

・GS1データバー二層型

・GS1データバー限定型合成シンボルCC-A

・GS1データバー二層型合成シンボルCC-A

・GS1-128(CODE128)

 

参考情報:「医療用医薬品特定用符号表示ガイドライン(日本製薬団体連合会)

 

 

医療用医薬品のバーコード表示が変更された理由

 

先に挙げたガイドラインには理由として以下の5つが挙げられています。

(1)医療用医薬品取り違えによる医療事故防止

(2)トレーサビリティ確保の観点等を踏まえたその後の変化

(3)調剤包装単位への特定用符号表示および販売包装、元梱包装への変動情報の表示必須化

(4)薬機法改正による表示の義務化

(5)添付文書の電子化

 

処方箋に基づいて薬を処方する際に、間違えた薬を処方してしまっては大問題になってしまいますが、薬を目視確認するだけではなく薬に貼られているバーコードを読み取って確認することで、それが処方された薬と間違っていないかをより確実に確認することができるようになります。

 

トレーサビリティ確保とは最近ではよく聞かれる言葉ですが、GS1データバーによって薬の製造工程や検査工程などを把握したり、薬の在庫管理、配送、販売などの一連の流れを追っていくことができるようになります。また医療用医薬品には有効期限や製造番号などの変動情報表示が必要な生物由来の医薬品といったものもあり、それらもGS1データバーで管理が可能となっています。

 

わかりやすく言ってしまえば、これらのバーコードによって医療用医薬品のIoT化、DX化による「見える化」「自動化(効率化)」を実現することで、薬の安全性をより担保し、薬を提供する現場での事故を予防するだけでなく、在庫管理業務などで医療従事者の負担を軽減することも可能となります。

 

 

具体的にどんな具合に使われているのか

 

さて、実際にGS1データバー及びGS1-128がどのように医療用医薬品に使われているのかの具体例を見ていきましょう。

 

「調剤包装単位」(薬を包装する最小の包装単位のこと)

薬の形状には錠剤、カプセル剤などがありますが、これらはPTP包装シート(錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート)に入っていることが多いと思います。このPTPシートにその薬のバーコードが印刷されています。ここで使われているのは「GS1データバー限定型」で、印字する面積が小さい場合にはバーコードが二段になった「GS1データバー二層型」が使われています。

 

 

 

 

生物由来製品(ワクチン、血液製剤など植物を除く人やその他の生物の細胞からできている薬)や特定生物由来製品(輸血用血液製剤など主に人の血液や組織に由来する薬)には有効期限と製造番号が必要とされることから「GS1 データバー限定型合成シンボル CC-A」が、印字する面積が小さい場合には「GS1 データバー二層型合成シンボル CC-A」が使われています。

 

「販売包装単位」(薬の販売業者から病院や薬局に販売される最小の包装単位のこと)

これも「調剤包装単位」と同じように、薬の包装が入った箱に「GS1データバー限定型」「GS1データバー二層型」や「GS1データバー限定型合成シンボル CC-A」や「GS1データバー二層型合成シンボル CC-A」が使われています。

 

「元梱包装単位」(販売包装単位を複数入れた箱。段ボールなど)

この箱にはGS1-128というシンボルが使われています。

 

 

医療用医薬品のバーコードはどうやって読むのか

 

ここまで医療用医薬品のGS1データバー及びGS1-128について書いてきましたが、ではそのバーコードをどうやって読むのか。二層型だの合成シンボルだの、よく見るJANコードなどとは違って読み取ることも難しそうと思われると思います。これまでは読取り精度を確実なものにするために、これらに対応した高性能なバーコードリーダー(バーコードスキャナー)が使われてきましたが、昨今ではスマートフォンのカメラを使って読むアプリ(以下スマホアプリとします)も登場しています。

 
 

医療用医薬品のバーコードで活躍するCamReader

 

当社のQRコード/バーコードを読み取るライブラリ(ソフトウエア)の「CamReader」は追加の読取りバーコードとして2024年7月9日に「GS1データバー二層型」「GS1データバー限定型合成シンボル CC-A」や「GS1データバー二層型合成シンボル CC-A」のバーコード読取りに対応をしています(リリースはこちら)。

 

もちろんこれらのバーコードを読んだだけではどうしようもなく、読んだ後にシステム処理をすることで「医療用医薬品特定用符号表示ガイドライン(日本製薬団体連合会)」で書かれている医療事故防止やトレーサビリティ確保などが実現可能となります。医療用医薬品取り違え防止としては、スマホアプリでその薬のコードを読むとそれが処方箋に指示されている薬と合っているかどうか(間違っているとアラートが表示される)が確認できると共に、薬のリアルタイム在庫管理もできるというサービスも登場しています。

 

病院や薬局など医療関係の職場は人手不足や過労状態が続いている状況ですが、薬だけでなく医療機器においてもバーコードによるIoT化、DX化は進められています。それによってより医薬品の管理や安全性の高度化、医療関係現場の省力化、さらにはそうしたデータを活用したビッグデータの有効利用が進んでいくと思われます。

 

なお、「医薬品とバーコード」というテーマでもう1つ忘れてはならないものにお薬手帳アプリ(電子版お薬手帳)がありますが、それは別の稿で説明をさせていただきます。

 

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